淡路島でも徳島県寄りの津井に道上氏の瓦工房はあります。まず入って驚いたのは床が拭きしめられ、道具類の汚れが落とされ、所定の位置に整然と配置されていることでした。「工場の環境は働くものの安全や製品の品質に関わってくることです。現場をきれいに保つことは瓦製造に携わる者にとっても基本ですから。」なるほど、頷きながらたたずんでいると何とはなしにこの雰囲気から新しさを感じるのは何故なのでしょうか・・
浩行氏は15歳の時に先代である父親を亡くし、奈良県での修行後20歳で道上家の家業を継いだ若き瓦師です。ここでは古くて新しい瓦の世界を見ることができます。
瓦のサイズは通常1坪当たり53〜56枚が規格版です。しかし見せていただいた瓦のなんと小さいことか。これは80枚版小瓦といい装飾を目的に6年の歳月をかけて開発した”マルアサ”ブランドの品です。
瓦の大きさは街を歩くスピードや目線・道幅などで感じ方が変わってきます。人との距離感が近いものほど瓦のサイズも小さい方が受け入れられやすいことから塀や門・店舗のファサードなどで多く使われているそうです。この小瓦、1枚完成させるのに3週間かかるそうですよ。それはプレス後の成型や磨きなど機械化による工程の合間に必ず自らの手指の感覚で確かめながら進める作業をいれているからだといいます。淡路のいぶし瓦特有の吐土を施し、窯に並べる作業も歪みが出ない位置を取るには熟練が必要だとか・・実際に職人さんが働く工房を見学させていただくことは興味深いものです。
出来上がった瓦は茶紙で包みマルアサの銘がはいったレッテルをつけます。
手をかけ大切に作り上げた製品は、包装されここで一味違う商品となりました。
道上氏は言います。「瓦というものを多くの人に知ってもらいたいです。職人が作っている様子や工房に遊びに来ていろいろな製品をご覧になっていただくだけでもいいのです。きっといいものなんだなと思いますよ。」伝統を受継ぎながら新しい考え方も持ち合わせる5代目は同じ世代の後継者と交流を図りながら瓦の新たな道を模索しています。