伝統の引っ掛け桟瓦で通産大臣賞を受賞した父・良治氏を継いで京瓦窯元の三代目となる。1994年平安遷都千二百年を記念して、平安京当時の迎賓館「豊楽殿」屋根にあった、高さ1.5メートル、幅60センチ、奥行1.1メートルもの鳳凰「鴟尾」を自らの時代考証をもとに図面を起こし6日間焼き続けて現代に蘇らせた。
「土をねかせて練る、図面をひく、瓦を磨く、これ全部人の手がたよりです。するとどんな複雑な屋根の勾配でも瓦がぴたりと載る。いぶしの光沢などは、それはもう美しいものですよ。」
物作りの基本は手作りにある。この思想が京瓦の全工程を見事に貫いているのだ。機械化を取り入れ過ぎると長年の鍛錬で得た指の感覚が失われ、規格通りの仕事しかできなくなるという。熟練した者の仕事はその場に即した微調整を五感をたよりに機械より正確にやり遂げるのである
しかし浅田さんは「この仕事が好きですから、ずっとこれからも頑固もんで通すのでしょうね。」と、こともなげに笑っている。温和で優しさがあふれる瞳の奥に頑固なまでの職人気質と、一方では芸術家としての誇りさえも垣間見ることができる。
今、彼は、従来機能美に近かった瓦の伝統技術を独創的な物作りに活用している。町家の屋根にいる魔除けの鐘馗さん、もともとは鬼瓦の一部として作った干支・家紋瓦の置物、重厚な行燈調の照明などは美術品のテイストを漂わせて私たちを驚かせる。京鬼瓦師、浅田晶久氏。夢は古い時代の瓦を作風を損ねることなしに一から作りなおすこと。彼は伝統の熟練技を守る職人と同時に瓦に新しい生命を吹き込む「アーティスト」なのかもしれない。